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心とは何かを問いかける『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想

TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』オリジナルサウンドトラック VIOLET EVERGARDEN:Automemories

久々に良いアニメに出会えました。
人の心が良く理解できない「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の成長を描いた物語。

単純な成長物語ではなく人々の手紙を代筆することで心と言う物を知ってゆく物語だ。

主人公はもしかすると私たちそのものかもしれない…。
あまりにも素晴らしくて一気見してしまったので感想を記していきたい。

ネタバレがあります。

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主人公ヴァイオレットは心と言う物が何なのかをよく理解できない。
戦場で拾われた孤児故に戦闘の道具として育てられてきたからだ。
心のない戦闘機械として人々を殺めていく存在でしかなかった。

そんなヴァイオレットが手紙の代筆を行う『自動手記人形(ドール)』という職業に就く…。

代筆といっても依頼者の言葉をそのまま記すのではなく、人の本心を拾い上げながら手紙を作成していく。少し前に流行った言葉でいうならば「忖度」が必要となる高度な職業と言える。

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そんな彼女がドールになったのは忘れられない言葉があったからだ。戦時中に自身の上官だった『ギルベルト少佐』が最後に残した「愛してる」が忘れられなかった。でもその意味が彼女には分からない。それほどに人の心が理解できていないのだ。だからこそ、彼女はドールになり「愛してる」を知ろうと努力している。

だが彼女の努力はひたむきさを感じることはない。淡々と仕事をこなす。それはまるで機械のようだ。戦時中に道具として扱われていた時と何ら変わらないようにすら思える。


そんなヴァイオレットの存在に真実味を与えるのが彼女を演じる石川由依の抑揚のない機械のような演技だ。無機質さを際立たせる演技がとてつもなく見事で、初期のヴァイオレットは本当に心のない機械のようだった。

初期の彼女には喜怒哀楽すら存在しない。そんな高度な演技を見事にこなした石川由依は素晴らしい。ヴァイオレットの存在をより際立たせ、尚且つ物語のもつ「心」という意味合いを強く印象付けている。

この作品は「心とは何か」を問いかける。愛、喜びや悲しみとは何かを問いかけてくる。そして悲しみも。
手紙はただの文字を記した紙なのかもしれない。しかしその紙には人の想いが強く込められており喜怒哀楽を現すのだ。受け取れば嬉しくもなれば悲しくもなる。

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手紙を書くのは簡単だ。
しかし心の奥底までを記すことは簡単ではない。だからこそ人々はその能力に長けたドールへ代筆を依頼するのだ。

相手に自分の本心を知ってほしい、伝えたいことがある。ヴァイオレットは代筆を通して心とは何かを理解してゆく。仕事をこなす姿は無機質で機械のようだが、依頼人の心を読み取る能力を徐々に得てゆき、その過程で感情も取り戻してゆくのだ。

笑うことも泣くこともしなかった、というよりも出来なかった彼女が感情を取り戻してゆく様は石川由依の演技も相まり説得力を引き立たせている。

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物語を追いかけているとヴァイオレットという存在は私たちそのもでなのでは?と感じることがある。
もしかすると私たちは本当の意味で喜怒哀楽や「愛している」を知らないのかもしれない。

心とは一体何なのか。それは目に見えない。だからこそ読み取ることが難しい。相手が何を思っているのか言葉では理解できても、本心まで読み取ることは本当に難しいのだ。
心と言う概念は一言で言い表すことのできない難解なものなのだろう。

その人が何を思い手紙を記そうと思ったのか、何を思い言葉を発しているのか。私たちは言葉の表層しか読み取れていないのかもしれない…。

この作品を見ると言葉の持つ重みとそれに隠された心を知ることになるだろう。ヴァイオレットのように私たちも心というものが何なのかを徐々に理解していくのだ。

あの時貰った手紙、メールや言葉の意味を言葉通りの意味で受け取っていた。もしかするとあの人は本当はこんなことを言いたかったのかもしれないのでは?
この作品を見ると言葉の中に隠された心と言う物を知ろうと思えるはずだ。

言葉や文字はただそれだけの存在ではない。そこには人の心が隠されている。心の意味を知ることで人は人になれるのだということを伝えてくれる。そんな素敵な作品だ。