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『シン・ゴジラ』予告編が見せつけた恐怖と絶望を解剖する

現実対虚構。遂にゴジラの動く映像が解禁された。
ただれた皮膚が強烈な嫌悪と不安を催す。これほどまでに畏怖してしまうゴジラはかつて存在しただろうか。

本作はIMAXと4DX、MX4Dで公開が決定している。

この最恐のゴジラについて解剖し考察していきたい。

1.徹底された絶望感

こんな恐ろしいゴジラがいただろうか。真っ赤にただれた肌はVSデストロイアのゴジラを思わせるが、それとは印象が全く異なる。のっそりと動く様子はどこか神聖さを感じさせるが、同時にその緩慢さこそが恐怖と不安を生み出す要因にもなっているのだろう。

今までにない恐怖。「近づかないでくれ」と感じるゴジラは初めてだ。

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明らかに震災を連想させるカットも盛り込まれており、今回のゴジラは日本人の傷をえぐる作品になるのかもしれない。

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都市部でゴジラと自衛隊が激突する・・・。

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ゴジラは自衛隊の攻撃にも動じない。動じないというのではなく"何も感じていない"というべきだろう。

異形ではあるが、どこか悠然さを感じる。これが怪獣"王"の余裕だろうか。
今までも自衛隊の総力戦でゴジラを食い止める描写は幾度となく登場したが、今回ほどの絶望感は感じられない。
ゴジラの姿と醸し出される雰囲気、そして”普通の夕暮れ”がミスマッチを発生させ、恐怖を生み出している。

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2.ハイブリッドによる新世代特撮

一部報道では「ゴジラはフルCG」となっているが、これは誤りである。樋口監督は「特撮とCGのハイブリッドになる」と答えている。実写進撃の巨人のような映像を想像してくれれば分かりやすいだろう。

今回のゴジラはその姿から中に人が入る方法で撮影しているとは考えにくい。

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腕は細く小さい。予告編では緩慢な動きしか見せていない。腕の細さと小ささから、これは中に人が入って演じるスーツではなく"操演"で動かしているのではなかろうか。

実写進撃の巨人も超大型巨人は人形浄瑠璃のような操演で動かされていたので、このゴジラも似たような演出がされているように思える。

赤く発光する皮膚。VSデストロイアを思わせる。デスゴジは燃え盛る印象を与えたが、シンゴジラは傷のような痛々しさを印象付ける。ウルトラセブンのスペル星人を連想させてくる。
この赤い発行は内部に電極を仕込んでいるのではなく、CGで付け加えているはずだ。

進撃の巨人で培われた技術が、シン・ゴジラで存分に発揮されている。スーツだけならこのような不気味さは表現できなかっただろう。CG処理を施すことで完成した異形の神。まさにハイブリッドならではの表現と言える。

ゴジラのCGモデルも作られているようなので、一部ショットではフルCGゴジラが登場するだろう。

3.考察 シン・ゴジラの物語とは

キャストは総勢328名。異例の規模で撮影されたシン・ゴジラ。本作の物語を考察していきたい。

物語は政治家主体で進んでいくようだ。長谷川博己は内閣副官房長官役、竹野内豊は内閣総理大臣補佐官役だ。
311を連想させる場面も多く、ゴジラを災害的な物として描こうとしているはずだ。

この災害的ゴジラは84ゴジラを想起させる。政治家が主体の点も似ている。
ゴジラデザインも84ゴジラポスターを思わせる点も見逃せない。

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背びれや腕の形状……。随所にポスターからの影響が垣間見える。

84ゴジラは"日本にゴジラが現れたらどうなるのか"とのコンセプトで描かれている。政府主導で対ゴジラの方策を練り、災害パニック的な描かれ方をしている。

シン・ゴジラも同じ空気が漂っている。政府主導でゴジラ対策を描くのだろう。政府機関の場面が多いのも災害パニックの印象を強める。

日常的な風景に突如現れた異形且つ巨大な存在。食い止めようとしても、その動きは止められない。自衛隊の兵器にビクともしない姿はまさに地震や台風などの災害を思わせる。

もしかすると庵野樋口コンビは84ゴジラのリメイクもとい"理想形"を生み出そうとしているのかもしれない。

石原さとみは米国エージェント役と言う点も興味深い。
石原さとみは英語のセリフも多いと語っていた。確実にアメリカ絡みの展開が飛び出してくるはずだ。在日米軍の登場も噂されているため、彼女の動きに注視したい。

自衛隊がゴジラの信仰を食い止められず、在日米軍に協力を要請するとのゴジラ映画市場初の展開も予想できる。
84ゴジラではアメリカとソ連が核兵器を使用する動きを見せたが、シン・ゴジラではゴジラの侵攻を食い止められない日本政府が米国に要請して核兵器仕様の決断を迫るような状況も予想できる。
日本で核兵器を使用するタブーに踏み込んだ可能性はあり得るだろう。

4.ゴジラの出自は? 行動は?

今回は初代ゴジラが存在しない世界。
ゴジラが初めて現れた世界故に、出自を想像してしまう。
ゴジラファンならこの場面に注目したはずだ。

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"呉爾羅"と書かれたファイル。初代ゴジラは大戸島の伝説に登場する"呉爾羅"に倣って呼称されるようになった。
シン・ゴジラの世界にも大戸島かそれに類する伝説が存在しているのだろうか。
ゴジラの呼称はこの表記から取られていることは間違いなさそうだ。情報が少ないので出自は読み取れない。赤い肌から察するに放射能が絡んでいるはずだが……。

レジェンダリー版は大自然の驚異的な側面を持っていたが、シンゴジラはそれと同時に人類の罪を象徴する物を持ち合せているようにも見える。

予告で描かれたこの場面。

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Twitterでロケ地が特定され、神奈川の鎌倉だと確定した。

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ずらりと10式戦車が並んでいる場所は川崎市だ。

ゴジラは鎌倉から上陸し川崎へと進む。そこで自衛隊と激突するという流れだろう。
ゴジラは確実に東京を目指している。なぜ東京を目指すのかは不明だが、日本政府はゴジラの首都侵攻を食い止めるために行動していることが読み取れる。

このゴジラは熱線を吐くのだろうか。平成やミレニアムのように光線的な熱線はこのゴジラに似合わない気がする。(個人の感想)
そもそも、熱線を吐いたら死にそうな印象すらある異形さだ。自衛隊の攻撃には動じないが、何らかの拍子で突然死しそうである。

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予告冒頭の鳴き声をあげるゴジラ。他は緩慢な動きなのに対して、この場面だけは獰猛さをあらわにしている。
昼間は光の影響で活発に行動できないのか。初代ゴジラのように夜行性か? 初代は光に敏感な反応を見せていたが……。

ゴジラを激しく反応させる何かが起きている。何だろうか。自衛隊の攻撃に動じていない事から、それを超える物だと推測される。

謎だらけだがゴジラは『スカイツリー』を破壊するのだろうか。ここにも期待がかかる。

5.さいごに

遂に予告編が解禁されたが、同時に謎をもたらした。

分かることは"これまでにない絶望感"と"恐怖"、そして"神聖さ"だ。今回のゴジラは不気味だが、どこか神神しさを覚える。この居心地の悪さが今回のゴジラを象徴させる要素だ。
かつてない最恐のゴジラ。こいつが魅せる世界とは何か。

確実に言えることが一つある。
このゴジラは「観る」でもない。「キメる」でもない。
「目撃してしまう」作品だということだ。

僕たちは既にゴジラの存在する世界に叩き込まれている。