Secret baseが過労死する『実写ドラマ版 あの花』
アニメや漫画の実写というのは禍根しか生まないように思えますが、この作品もとうとう実写になりました。
一般層にも受けたと思われるアニメ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」が実写ドラマになったわけです。
あの花です。ええ、テレビ版も映画版も見ました。感動作として有名ですが、ドラマではどうなるのかと不安と期待が入り混じっていたんです。
そもそも本作はアニメでも実写でも、どちらでも描ける内容ですからね。アニメでなければ辛い物語や設定、描写があるわけでもない。成仏できなかった人が現世に現れるというのは王道的題材ですからね。
さて、ドラマ版はどうなったのか。
気になった点を上げていきます。
過労死しそうなほどの過剰演出
脚本に関してはアニメ版を濃縮しているせいでダイジェスト版のように見えましたが、無理やりには見えず案外よくまとまっているように実感しました。ただ駆け足に思えたので感情移入がし辛かったのが残念な点。
特に問題だったのは演出面です。これがあまりにも過剰すぎた。泣きましょう。さあ泣きましょうと言わんばかりの感傷的な演出が目だつ。
Secret baseもアニメと同じように流れてきます。アニメの持ち味は実写にもそのまま輸入されてきましたね。それは良いのですが、Secret baseの使い方が過剰。
アニメ版では要所に盛り込んでくるのと、次の話まで1週間明くためにくどさは感じないようになっているんですよ。
しかしドラマ版は2時間少しの枠で3回もSecret baseを流す!
女装ゆきあつが泣き崩れる場面でも流す!いや、ここは流さなくてもいい場所でしょう・・・。
とにかく流す!Secret baseのテープが擦り切れるんじゃないかと思うぐらい、流すのです。シークレトベースに頼りすぎだ!
このSecret baseが流れると「ここで泣いてください」と指示してくるように見えてしまい、辟易しました。
ちょっともう勘弁してくれ。
なんでこんなにSecret baseを乱用するのだろうかさっぱり分からない。これは重要なところで視聴者の涙腺を打ち抜くために使用するもののはず。何度も使用するとそれはただの「泣くためのカンペ」にしかならない。
もういいです、満足です・・・。と胸やけのような感覚に襲われるほど。
アニメ版も感傷的と言えばそうなのですが、こちらはもう少し抑揚を抑えて、泣かせるべき場面をわきまえていた。実写ドラマ版はどうにも最初から泣かせる気満々なのが透けて見えるから勘弁してほしい。
押しつけがましい感動は、どうにかならないものなのか。
残念な点はあれども、手堅くまとめられた良作
さて、キャラクター面でも少し不満がありましてね。特にゆきあつ。
アニメ版同様にめんまの女装をするのですが、これは無くてもよかったように思うのですが・・・。
女装に至る順序もおかしい。まだめんまが現れたことを知らない、物語の冒頭でワンピースを購入していますからね・・・。これではゆきあつが元からそういった趣味のある人にしか見えない気がします。伏線の順書を間違えている。
劇中でめんまに会いたい、会わせてやりたいよ説明があっても、とってつけたように見えてしまい、なんだかゆきあつが変人に見える始末。
構成のおかしさとSecret baseの酷使以外は至って真摯に作られており、まとまった作品になっていました。
じんたんのぬぽーっとした冴えない感じはよく再現されていましたし、お顔もそっくりに見えました。
超人が出てくるわけでも、モンスターが出てくるわけでもない、ごく普通の青春物なので、実写にしても違和感がないのが勝因なのでは。
物語がダイジェストに思え、展開の速さで置いてきぼりになっている感じは否めない。しかし妙な方向に向かうことはなく、物語はまとまっていましたしね。
キャラクターの掘り下げがあまりできないのは仕方がないとしても、めんまを成仏させるという軸がぶれることはなく、少年少女たちがそこに真っ直ぐ向かっていく様は分かりやすく描かれていた。
ラストシーンはアニメ版よりも実写のほうが好きだという人も多そう。めんまが幼少化して思いのたけを吐き出す演出はにくい。
めんまは成長した姿で現世に出てきたが、心は幼少期のまま止まっているのだという事が明確に描かれた形になり、余計に涙腺を刺激された人もいるはず。
ドラマ版にも優れた点がありました。どうにも、叩くことが難しい作品に仕上がっています。
不安を抱きつつ、ふたを開けたら良作だったというのがドラマ版あの花だったのです。