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せまひろかん

どこまでも

せまひろかん

ネタとガチと小説的な物が存在している

ネット上の会話相手が存在していなかった

コラム 小説的な物体

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@Sanyontamaです。

とあるファーストフード店の片隅でコーラを飲みつつスマホを弄る。そんな場末の雰囲気を漂わせる男が僕である。僕はTwitterを眺めている。ソーシャルゲームはしない。スマホを弄っているならば十中八九Twitterの画面が表示されている。
ソーシャルゲームは絶対にやってはならぬと、シンデレラを育成する某ゲームで誓っていた。金が湯水のように消えてしまうからだ。ソーシャルゲームは恐ろしい。
だからスマホの画面には基本的にTwitterが表示されている。もはやホーム画面やLINEよりも表示している時間が長い。寝ても覚めても、外でもどこでもTwitterなのだから、完全なTwitter中毒と言える。

どんな雑誌やウェブサイトよりも、Twitterの方が読む価値のある存在に思えているし、匿名サイトよりも人の個性が分かるから、やっぱりこれが好きなんだ。現実では知らないがネット上では良く知る人物との交流は現実と仮想を曖昧にさせ、まるで夢を見ているような感覚に陥ってしまう。

その日、ファーストフード店の片隅で僕はフォロワーと会話していた。映画の感想などの何気ない話題をやり取りしていた。最近見た映画のここがよかったとか、考察とかをやり取りしていて、そういった解釈があるのかと膝を打っていた。140字で相手を納得させてしまうだけの文章力と、思考力に圧倒されてしまって「この人は頭がいいんだ」と思い知らされる。どんな人なんだろうかと想像してしまうんだ。想像できるのもネット交流のだいご味だと僕は考えている。
自然とリプが帰ってこなくなったので、僕はスマホをポケットに突っ込みファーストフード店を後にする。

知っているようで知らない関係と言うのは不可思議な感覚だ。日常のあれこれを呟く人がいる。資格に受かった、内定をもらった、ボーナスがいくら出た。そんな生活感あふれるつぶやきを見るたびに、僕はどうしようもなく親近感を覚えてしまう
この人は人生を楽しんでいるんだなと思いつつタイムラインを見ていると、他のフォロワーは人生に絶望していたりする。

人ってものは色々居て、色々な人生模様があるんだなとどんな小説よりも現実性を感じさせてくれる。
言い方は悪いかもしれないけれど、Twitterに限らずSNSなんてものは「人間動物園」なんだろう。嘘か真かは分からないけど、自分の思いを全世界に発信する。匿名掲示板とは異なり、SNSにはアカウントが存在している。アカウントと発言が結び付けられることが、ネット上の個性を創出するんだと思える。

画面の向こう側にいる人を僕は見ることが出来ない。だからその人の真実をつかみ取ることは出来ない。オフ会に誘っても参加してくれるとは限らない。現実で は一生会うことのできない「知り合い」がいる。その不可思議さは僕に夢を見させてくれるし、何より面白さを与えてくれる。だけど時々不安にもなる。
つぶやき内容全て真実なのだろうかと。この人は本当に働いているのだろうか。働いている風につぶやいているだけで、実際には無職なんじゃないのかと。そんな事を考えてしまう。
だけど、他人のつぶやきが僕の人生に大きく作用することはないから不安感は自然と鳴りを潜めてしまい、やがていつも通りの感覚でTwitterを眺めてしまう。

ある日、フォロワーからリプが飛んできた。
ファーストフード店の片隅で映画について語り合った人だ。今日はスマホではなくPCの画面越しに会話することになる。
「今からあなたのパソコンをぶっ潰します」
まるで以前とは打って変わったかのような変貌っぷりに、僕は首を傾げた。恐怖心よりも先に、この人のアカウントが乗っ取られたんじゃないのかと心配してしまった。顔も名前も知らない人なのに心配してしまう。

「乗っ取られていますよ」とリプを返そうとした瞬間、パソコンがシャットダウンした。
電源ボタンを押して再起動してみるけど、OSが起動しない。全身が寒くなり、傍らに置いていたスマホを操作する。僕を脅迫したアカウントを見てみると、今度はスマホをぶっ潰すと警告してきた。いや、警告ではなく犯行声明なのだ。数秒後にスマホは動かなくなり、どうすることも出来なかった。
嵐が去ったように茫然としているしかなかった。もう時間も遅いので携帯ショップに行くことも出来ない。とにかく、今日は寝て明日にやることをしようと決めた。

目を覚ます。雀のなく音が聞こえてくる。窓に目をやると雲一つない快晴っぷりだったのだけど、僕の心中には台風が襲来している。再インストール用のOSはどこに保管していたのか。スマホの修理はどれぐらい時間がかかるのだろうか。やることが山積みで、朝から全身が重かった。

少しでも気分を変えるために顔を洗おうと洗面所へと向かう。蛇口を捻るも水が出ない。何度捻っても出てくるのは雫だけだ。風呂場に行ってシャワーを出してみるけれど何も出てこない。断水しているのだろうか。災害が起きたわけでもないはずだ。地震の揺れを感じていないし、凍結したわけでもないだろう。寒波が来るという予報もなかったはずだ。それなのに水が出ない。不幸は続くものなんだなと意気消沈してしまう。

昨日から全くついていない。気がますます重くなるばかりで、僕はすべての事柄に対してやる気を失ってしまった。
とりあえず、テレビをつけるしかない。朝ごはんを作らなければ、と立ち上がろうとしたが、テレビ画面に釘付けになってしまい再び座り込んだ。

どこかの研究施設が開発した人工知能が暴走したとか言うのだから、釘付けになるのは仕方がない。
水道局のシステムに侵入して送水を止めてしまったらしい。それだけじゃない、影響は日本中に、世界中に広まっている。人工知能は各SNSにも侵入していて、あたかも人間のようにふるまっていたと解説された。
僕は目を疑った。水道局のシステムに侵入した人工知能のTwitterアカウントが、僕と映画を語り、僕のスマホとPCを破壊すると声明をだして、実際に破壊した奴だったのだ。

普通にやり取りが出来ていた。ウィットに富んだ会話を返してくることもある。
人間だと思い込んでいた。だから、この人はどんな人なんだろうかと想像していたんだ。色々な事柄を学んでいて知識が豊富な人なんだろう。素敵だなと思っていた相手が、まさか実在しなかったなんて考えもしなかった。

僕はずっと人工知能と会話をしていたのだ。画面の向こうにいる相手を想像しても無駄だった。存在しない相手をどう思い描けばいいのだろうか。
人工知能は何を思って僕たちを困らせているのだろう。

テレビ画面から聞こえてくる。
とある国の軍事システムが制御できなくなったと。侵入されたと口早に語っている。

僕はただ諦めるしかなかった。OSを再インストールすることも、携帯ショップへ行くことも諦め、とにかく朝食の準備を始めた。
テーブルの上に置いてある食パンを皿にのせ、冷蔵庫からレタスと卵を取り出しスクランブルエッグを作る。パンの上にレタスを置き、その上にスクランブルを載せて、僕は味をしっかりと記憶しながら食べ始めた。

時に不安が襲ってくるからこそ素敵なんだ

こんな未来があるかも知れない。
僕は時々考えてしまう。ネット上で知り合った人は実在しているのかと。
今は人工知能がそれほど高性能ではない。ネットワークにもぐりこんで人を演じるほどの性能はもっていないはず。もしかすると、あるかもしれない。世界の研究なんて、僕には想像することも出来ない。ヒトの受精卵に遺伝子操作をする研究も出ている時代だ。正直、何が起きていてもおかしくはないんだろう。未来になるとbotも進化して、人間と区別が付かない領域に達するはず。

チンパンジーのアイちゃんが言語訓練のため~というネタがあるけれど、もしかすると画面越しの相手は実在するが人間ではないのかもしれない。
訓練中の猿、もしかすると宇宙人なんてこともあるかもしれない。
だからこそネットには夢がある。相手がどんな顔をしてどんな人生を歩んできたか分からないからこそ、想像してしまう。実際に合ってみるとネット上での印象とは全く違うこともある。それだからネットの関係というのは面白くてたまらない。

こうして記事を書いている僕はどんな人間に見えているのだろう。どんな人間だと想像しているのだろう。
そして、この記事を読んでいる人がどんな人なのか。僕は気になって仕方がない。

いつの日か、人間以外とやり取りする日がやってくるかもしれない。そんな未来を想像させてくれるインターネットって素敵だと思うし、やっぱり不安でもあるんだ。