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なんで洋画の宣伝は駄目になったんだろう?理由を考えてみた

 Cinema São Luiz

 極めつけはスターウォーズだ。SFというジャンルにとどまらず、映画そのものを代表すると言っても過言ではないビッグシリーズなのに、中途半端な時間での一斉公開と限定パンフがアナウンスされた。

 なぜこんなことをするのだろうか。理解しがたい状況が発生している。ここ最近の洋画宣伝は斜め上へと向かっている。
 アベンジャーズの愛押しとベイマックスのハートフル宣伝、マッドマックスの吹き替えと日本語版エンディングテーマ・・・。列挙するとキリがないけれど、純粋に「作品内容」で勝負する宣伝ではない。作品内容は二の次で話題性に重きを置いた宣伝ばかりになっている。
 なぜそんな事が起きるのか個人的に分析してみた。
 ちなみに映画業界の人間ではないし、業界に詳しいわけでもないので全て憶測で分析することになるので、頓珍漢な記述があればご指摘願いたい。

奇妙な宣伝


 まずは2014年末に公開されたベイマックスを紹介する。
 邦題はベイマックスであるが原題は「BIG HERO6」である。アメコミの老舗、マーベルから出版されたヒーローチームが原作だが、作品自体にお馴染みMARVELロゴは登場しない。完全なディズニー作品として制作されているからだ。
 さて、そんなヒーロー映画だが日本ではいわゆる「心温まる物語」との宣伝が行われていた。予告編もセンチメンタルで、兄を失ったヒロがベイマックスと交流していき心を癒していく。そんな内容を思わせる仕上がりだった。
 このセンチメンタルさは本編にも組み込まれていたが、それは物語の根幹をなす成分ではない。実際に根幹を成したのは「ヒーロー物」成分だった。確かにセンチメンタルで心がほっこり温まる内容にはなっているが、それが主軸ではないために、どうにも宣伝のやり方に疑問符が浮かんでしまうわけだ。
 CMのやり方間違っているんじゃね? という意見も見られた。

 次にアベンジャーズ2だ。日本では世界から2か月遅れで公開された。前作アベンジャーズでは「日本よ、これが映画だ」とやけに挑戦的なキャッチコピーで日本市場へ殴りこんできたが、アベンジャーズ2では「愛」と謎のイメージソングで大プッシュしてきた。まるで前作とは全く別物かと思うほど。
 スーパーヒーロー映画なのに、愛を推すという不可解さと日本版ポスターのダサさが話題となった。実際に本編では「愛」の成分もあったので間違いではない。しかしなぜ日本版オリジナルポスターにしたのか、その理由が分からない。

・日本版ポスター

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・アメリカおよび全世界共通ポスター

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 アイアンマンが印象的なポスターとなっている。さて、どういう意図があるのか。

 マッドマックス・怒りのデスロードも日本語吹き替えに専業ではない芸能人が起用され、日本語版オリジナルエンディングテーマが採用された。映画ファンからは大ブーイングが出ていたのは記憶に新しい。
 日本で興収90億円を突破したジュラシックワールドも芸能人吹き替えが起用されて波紋を広げた。

 そして奇怪な宣伝だらけの2015年を締めくくるのがスターウォーズ・EP7である。なぜか12月18日の18時30分に全国一斉解禁となり、特定の上映回を鑑賞すれば限定パンフレットを購入する権利が与えられる。意味が理解できないおかげで怒りを通り越しあきれる始末。

 紹介したのはほんの一部でしかない。他にもまだまだ存在している。吹き替えも担当していない芸能人が宣伝イベントに登場することもあり、洋画の宣伝手法は不可解だらけなのだ。ミケランジェロプロジェクトも芸人がイベントに招かれて映画と関係のない話をしていた・・・。

 本編とは全く関係のない部分で宣伝を行う。作品内容で勝負できないほど酷い作品なのかな、と考えた人もいるかもしれない。もしかすると宣伝で客を逃しているのではと不安になることもしばしばある。

邦高洋低


 頓珍漢な宣伝になる理由として洋画の不振が考えられる。かつては洋画のシェアが圧倒的であったが、近年は邦高洋低との状態になっている。
 2014年の日本映画市場興行データがある。

 2014年と言えばアナと雪の女王が大ヒットした。そのような現象もあり洋画の人気が高いと思う人もいるだろうがそうではない。記事によると2014年の興行収入は邦画が約1207億円に対して洋画は約863億円になっている。邦画人気が如実に表れているわけだ。
 かつては洋画の人気が高かった。人気俳優が出演していれば日本でもヒットしたのだが、現在ではそれも通用しなくなっている。
 圧倒的な邦画人気に押される洋画。有名俳優が出ていてもヒットするかが分からない現状。
 そこには洋画配給会社には危機感と焦燥感があるのでは。

 
洋画は興収10億円が大きな壁となっている。アベンジャーズシリーズ(正確にはマーベルシネマティックユニバース)ですら10億を超えるのが難しい。
 10億を超えたのはアイアンマン2と3、アベンジャーズ1と2、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにアントマンという状況だ。
 20億円の場合はアイアンマン3とアベンジャーズ1と2のみとなる。
 2014年に公開され日本原作・トムクルーズ主演のキャッチコピーで話題になったオール・ユー・ニード・イズ・キルも約15億円に終わっている。日本原作で有名俳優が主演とあれば、配給側も大ヒット間違いないと思っていただろうが、実際には微妙な結果に終わっている。
 2011年公開の猿の惑星:創世記が約23億円で、14年公開の続編では約14億円と10億円近くも下落する結果になった。

 過去の洋画結果を見てみる。
 93年ジュラシックパークは約141億円。95年のフォレスト・ガンプ/一期一会は約65億円。96年のインデペンデンスデイは約113億円。98年ではディープインパクトが約80億円、アルマゲドンが約142億円。2000年のグリーンマイルは約65億円、02年のマイノリティリポートは約52億円。映画ランキングドットコム
 過去公開された洋画はかなりヒットしていることが分かる。今の日本で公開された場合、このようなヒットには至らない作品も多いだろう。
 こうして見るとかつてとは様子が大幅に異なると分かる。
 評判が評判を呼びヒットにつながる。かつてはそれでうまくいったが、今では口コミで評判となっても、その効果は微々たるものだろう。アントマンも評判がいいが日本では10億円を超えた程度だ。

身長1.5cmの小さなヒーロー『アントマン』が興収10億円を突破! | 映画/DVD/海外ドラマ | MOVIE Collection [ムビコレ]

 
 確実に言えることは、洋画がヒットしない時代になったということだ。

高すぎる映画料金


 ここからは想像による記述が多くなることを断っておく。

 洋画の不振に関係しているのは経済情勢の変化も関連していると思われる。端的に言えば、お金がないから映画に回す余裕がない、という事だろう。

 邦画はテレビでの露出度も高く、ドラマ続編や既存の漫画小説からの実写化も多いので、内容が比較的分かるから安心して身に行ける側面があるのでは。
 テレビ局が制作する映画作品も多く、バラエティや情報番組などに出演して作品の知名度貢献を簡単に行えるのが邦画の強みだ。こんな作品があるのか、と知るきっかけは洋画より多いだろう。それに海外俳優よりもなじみのある俳優陣が出演しているのも大きいはずだ。だから、邦画を見る傾向にあるのだろう

 洋画を見たい人も多いはずだ。映画は年間何百本と公開されるし、全てを見ることが出来ない。話題作でも全てを鑑賞することは難しい。洋画も見たいけど、内容が良くわからないから後回しという人も多いはずだ。余裕が出来たら、と思いいつの間にかレンタルで済ます人だっていると思う。

 ここでカギとなるのは「余裕」だろうか。
 景気も芳しくない中で映画に回す余裕がない。内容のわかる邦画ならまだしも、よくわからない洋画にお金を回す余裕がない。そんな人も多いだろう。
 日本の映画料金は高すぎるからだ。

 基本的に大人は1800円。割引サービスもあるが、1800円が基本なのだ。3Dになると2000円になるし、IMAXでは2200円以上する。一部のIMAXシアターでは3Dが2500円と恐ろしい値段設定になっている。4DXの場合は3000円近い値段設定だ。
 1800円もあればファミレスで2人分の食事を賄える可能性がある。カラオケフリータイムだって出来る。そんな値段だ。あまりにも高いわけだ

 アジア圏では1000円前後。ちなみに台湾でIMAX3Dを鑑賞した時は440台湾ドルだった。現在のレートで1600円ほど。通常は310台湾ドルなので1100円程度だ。アメリカは約800円前後だ。アメリカでは上映から日数が経過した作品の場合は価格が下がり、1ドルほどで鑑賞できることもあるようだ。

 やはり日本の映画料金は高い。恐らく世界一高いのでは。1800円あれば服も買える。デフレだインフレだとお国もやきもきしている時代なのに、映画料金だけはこの十数年間ほとんど変動していない。
 柔軟性のない価格設定が洋画のみならず映画離れを引き起こしている原因だろう。
 


 調査結果を見ると劇場で映画を見る人は少ない。直近1年間で映画を映画館で見た人は35.9%だ。大多数の人はそれ以外の手段で映画を見ていることになる。映画館で映画を見る人でも年に4本ほどがやっとのようだ。自分の周りに年間2桁本数鑑賞者が多いので、この調査には驚いている。

 この調査からにも書かれているがアメリカンスナイパーが20億円を記録した要因はシニア層の存在が大きいと書かれている。この結果には納得できる。なぜならシニア層はお金を持っているからだ。

 対して若間のはお金を持っていない。○○離れと言うが、基本的に資金がないから娯楽に回す余裕もないのだ。だから手軽なもので済ませてしまう。
 お金がないから映画を見る余裕がない。1800円もあれば1日3食は余裕で賄えるだろう。そう考えたら映画なんか見ている場合ではない。
 映画料金の高さが映画離れにつながっていると考える。その料金の高さが映画を「特別なイベント」に繋げてしまうのかもしれない。1800円だと気軽に見に行くことも難しい。暇つぶし感覚で見に行くことも出来ないだろう。1800円は大きい。

 調査結果でも劇場予告に求めるのは「分かりやすさ」がトップに来ている。このことからも、内容を自ずと想像できる映画が好まれていることが分かる。安心感という物を観客は求めているのだ。
  邦画ならあるドラマの続編、漫画小説等の実写、アニメ版も多いのである程度内容は予想できる。それは安心感を生む出すので、気軽に鑑賞に望むことが出来る。
 しかし洋画はふたを開けてみるまで実際には分からない。アメコミ映画でも原作は身近ではない。だから洋画に尻込みする人が多いのでは。
 1800円でがっかりする可能性があるなら、ある程度安心できる邦画に流れてしまうのは必然的だろう。若者はお金がないから余計にその傾向が強いのかもしれない。
 安心感の有無が洋画離れにつながっている可能性は大いにありそうだ。

なりふり構っていられない


 超有名俳優のトムクルーズですらミッションインポッシブルシリーズ以外は20億を超えることが難しい。キアヌリーブスのジョンウィックも悲しいことに作品は素晴らしいのだが、興行成績は芳しくないようだ。ターミネータージェニシスも30億に届かない。もはや名前では売れない時代になっている。

 今まで通用した手法が通用しない。その事実に洋画配給会社は焦っているのだろう。昔なら「主演○○」で観客動員は望めた。でも今はそれが通用しないからどうすればいいのか分からない。作品内容で勝負するにもそれも難しい。
 マッドマックス怒りのデスロードがある。この「怒りのデスロード」は作品を見ずに決められたというのだ。

【本誌独占】邦題『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の「怒りのデス・ロード」を考案した男にインタビューしてみた! | ロケットニュース24

 本編の内容は分からない段階で邦題をきめる。宣伝時も似たようなものと思われる。内容が分からないから「作品内容」で勝負することも出来ないのだろう。

 手法が次々と潰されていく。ヒットするかが分からない作品に大金をつぎ込み宣伝する余裕と勇気もない。
 どうすればいいのか。
 ここで登場するのが変化球宣伝だ。

 日本ではヒーロー物というジャンルは子ども向けと言うイメージが強い。ベイマックスは思いっきりヒーロー物が原作だから、それに当てはまる。率直にヒーロー物として押し出せば失敗が目に見えている。子どもの物だから、と大人は敬遠してしまうだろう。しかし、センチメンタルな心温まる物語として売り出した場合、事情は変化する。ディズニーブランドと相まって「これは面白そう、泣けそうだ」と印書づけられる。
 ベイマックス公開時は妖怪ウォッチやアイカツが公開されている。ヒーロー物と率直に売り出すと子供向け作品と認識される。子どもは人気の妖怪ウォッチを選ぶはずだから敗北は目に見えている。だから変化球で大人を呼び込めるセンチメンタルな宣伝で売り出した。

 アベンジャーズ2の場合、日本版ポスターでアイアンマンが大プッシュされている。これは日本でキャプテンアメリカやソーよりもアイアンマンの人気が高いゆえの措置だ。
 アイアンマン2は12億円、アイアンマン3は25億円。キャプテンアメリカとソーは10億円にも満たない状況が続く中、アイアンマンだけは確実な結果を出している。
 だからアベンジャーズ2を売り出そうとした場合、人気のあるアイアンマンがプッシュされるのは必然の流れだ。アイアンマンが出ている作品ですよ!と強調することでアベンジャーズを知らない層への訴求力を持たせているのだ。アイアンマンが出ているのなら見ようかなと考える人もいるだろう。そういう点でアイアンマンを押し出す意味があるのだ。

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 そして愛。スーパーヒーロー映画であるが作中で僅かながらも存在した「愛」という成分を押し出す。ヒーロー物は敬遠されるから愛で大人をつるという作戦だろう。単純なヒーロー物ではない、大人も楽しめる重厚な要素があると伝えているわけだ。成功したかは不明だがアベンジャーズ2は1作目と同程度の興収に落ち着いたようだ。

 マッドマックスという人気シリーズで芸能人吹き替えと日本版エンディングテーマが起用されたのも変化球だ。有名シリーズですらヒットしない時代になっているからこそ、映画ファンが嘆くような吹き替えやエンディングテーマが起用されてしまう。それでも、一部の人には鑑賞動機になっているのだから成功とも言える。
 ターミネータージェニシスも30億を超えなかった。シリーズ物でも前作から興収が半減する物も多く、かなりの危機感が存在していると思われる。だから、予算を必要としない芸能人を吹き替えに起用する。

 邦画は出演者をバラエティにねじ込むことで宣伝できる。だが洋画の場合はそれができない。
 だからテレビやウェブで自動的に情報が拡散されるように芸能人を起用するのだ。
 人気、知名度の高い芸能人であればマスメディアが多く詰めかける。テレビや雑誌の枠を買い取って宣伝を行うにはかなりの費用が必要になるが、芸能人を起用すれば安上がりになる。テレビ、雑誌の取材陣が詰めかけ、最近ではウェブメディアも駆けつけるだろう。TVで報道さえSNSで自動的に拡散されるから、コスパは高い。

 これならば確実に成功する。その指標を洋画は失ってしまった。
 だからどうすればいいのか分からなくなっている。
 これは長年にわたる洋画人気に慢心してきた「ツケ」だと思う。ヒットさせる方法を未だに見いだせないからこそ、洋画宣伝に謎の芸能人が起用されたり、吹き替えがはちゃめちゃにされたり、ダサいポスターが登場したり、謎の限定商法を考案してしまうのだろう。
 
 洋画のマッドな宣伝はなるべくしてなったものだと考える。この結果にしかたどり着かなかったのだろう。
 人気シリーズでもヒットが怪しい現代。直球勝負はリスクが高いから変化球で勝負するしかない。だからこうなったのだ。

狂気の行方


 結局、洋画の不振は配給会社の慢心が生み出したものだと思っている。紹介してきた奇妙な宣伝はそれに拍車をかけるものだとも思っているが、SNSを見る限り芸能人が起用されることで鑑賞の動機になっている人もいるから、成功ともいえる。
 でも映画ファンとしてはやはり解せない。

 純粋に作品内容で勝負してもヒットするかが分からない。だから注目を集めるために変化球を投げる。

 とはいえ、注目を集めるためでも変化球すぎる。変化がかかりすぎ、ワンバウンドしてあらぬ方向に飛んでいるのだ。
 こんな狂気な宣伝が日本で洋画を復調させることに繋がるのだろうか。
 私にはそう思えない。洋画は面白い作品が多いのに、それを見てくれないなんて哀しいことだ。

 だから私はブログやツイッターに映画の感想を投稿する。稚拙な感想文でも、面白さが伝わって一人でも鑑賞者が増えるといいなと考えつつ、文章を記すのだ。

 しかしまずは映画料金を改定してくれないと、洋画どころか日本映画市場そのものの瓦解に繋がると思う。