読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

せまひろかん

どこまでも

せまひろかん

ネタとガチと小説的な物が存在している
TOP

『ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』はなぜコラボしたのか、ゴジラを取り巻く環境と思惑を探る

f:id:Sanyontama:20151210203021j:plain


こんにちは@Sanyontamaです。

エイプリルフールという物がある。4月1日の午前中は嘘をついてもいいことになっている。
ネット社会では様々な企業が嘘八百を並べて一般人を楽しませているが、その嘘の中には稀に真実が隠されていたりする。嘘だと思っていた製品を実際に開発していたりするのだ。エイプリルフールを逆手に取る意外性で好奇心を煽る手法だ。

その最中、あるコラボレーションが発表された。
それは『ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』のコラボである。エイプリルフール当日の0時に発表されたものだからほとんどの人は嘘だと考えていた。しかし、コラボレーションは本当でグッズとコラボイラストを描いたクリアファイル付き『シン・ゴジラ』前売り券が発売されるようだ。

なぜエヴァとのコラボなのだろうか。シン・ゴジラの総監督が庵野秀明氏であり、彼はエヴァを作った男でもあるから順当といえば順当だ。しかし、この相容れなさそうな両者をミックスする必要があったのだろうか。このコラボにはどのような思惑が隠されているのか探っていきたい。

現在における『ゴジラ』のブランド力

ゴジラは2016年で誕生から62年を迎える。2014年には二度目のハリウッド版が製作され、全世界で興収5億ドルを超えた。日本では32億円に達し、ゴジラ復活を印象付けた。32億円と言う数字は2014年の洋画興行で4位となる。

http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2014.pdf

 

f:id:Sanyontama:20160402235135j:plain


ゴジラは2014年に公開されるまで10年のブランクが存在していた。2004年のゴジラファイナルウォーズから新作は一本も作られてこなかった。そのファイナルウォーズは興収が12億であり、それから32億にまで上昇したのは健闘したといえる。
ただしファイナルウォーズとは状況が異なり、このハリウッド版はIMAX版と3D版が公開されている。つまり客一人当たりの単価が通常よりも高いという事なのだ。

そして、ファンは数回鑑賞しているという事実もある。僕も3回鑑賞し、二桁鑑賞した人もいたほどだ。今回が興行的に失敗すればゴジラの未来はないと危機感を持つ人も多く、そのような心理と高単価が相まって32億になったのだ。

つまり、純粋に大ヒットとは言えないわけだ。98年のトライスター版は50億を超える興収を記録しているので、3DもIMAXも存在しない事と、ゴジラ映画としては大不評を買っていた事実を考慮するとトライスター版のほうが純粋な大ヒットと言えるだろう。

平成シリーズは『VSモスラ』以降は観客動員数が400万人前後で推移しており、配給収入(興収から映画館分の取り分を差し引いた物、興収の50%前後)は15~22億円で推移していた。

ミレニアムシリーズは『2000ミレニアム』は興収16億円、『メガギラス』で興収12億円に降下し、ハム太郎と同時上映された『大怪獣総攻撃』では27億円に上昇しているが、その後の『×メカゴジラ』では19億円に減少。『東京SOS』では13億に降下し、ファイナルウォーズでは12億に至った。
平成期に比べるとミレニアム期は大幅に低下しているのだ。

f:id:Sanyontama:20160202085913p:plain


2014年版は前述のとおりIMAXや3Dによる高単価も相まって32億円に到達した。これは純粋なヒットとは言い難く、やはりゴジラのブランド力は以前よりも低下しているように思えるのだ。

『エヴァンゲリオン』の人気

2007年から公開が始まった『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ。第一作の『序』は興収20億円。『破』は40億円。『Q』は52億円になっている。
新作ごとに興収は右肩上がりだ。

f:id:Sanyontama:20160402235502j:plain


そもそも、エヴァンゲリオンは96年の放送終了後に劇場版が公開されている。その後も漫画版やゲーム、再放送等で人気と知名度を維持している。パチンコのヒットもエヴァの認知度を高めた一因だろう。パチンコは現在も続くヒットシリーズになっており、アニメを見ない層にも『エヴァンゲリオン』の名を知らしめることに成功している。

エヴァはパチンコで大人に浸透し、スーパーロボット大戦シリーズにも出演しているおかげで低年齢層にも浸透している。テレビ版を見ていた人は相応の年齢になっている。つまり、様々な年齢層に高い知名度を誇っていることになる。

ゴジラもパチンコを出したが、2010年登場以降は新作が出ていない。新作映画どころか、ゲームや漫画などの他媒体での動きも特になかった。2004年から2014年までの間に動きがないということはゴジラの名前を知らない世代を生んだことになる。

これらの要因を考慮すると現在ではゴジラよりもエヴァンゲリオンの方がブランド力は強いと言えるだろう。「エヴァの続きを作れ」と言われるのも、人気の裏打ちなのだ。

コラボの真意

「エヴァとゴジラ、両方を手掛けているからこの機会にコラボしたら面白いんじゃね?」との安易な考えもあっただろう。
個人的にはそんな"ノリ"ではなく、東宝的には現状をかなり深刻に捉えているのではと考えている。

前述したように、ゴジラのブランド力は以前よりも低下している。シン・ゴジラは"興収30億円が下限"とも言われている。

着ぐるみかCGかも注目 「日本版ゴジラ」興収に高まる期待 | 日刊ゲンダイDIGITAL

2014年のハリウッド版が32億だったため、日本産のゴジラも30億は到達して当たり前だろうとの空気が形成されているように思われる。
32億円はIMAXや3Dという料金の割り増しが存在して到達できた数字だ。ファンの複数回鑑賞も興収に大きく貢献している。

f:id:Sanyontama:20151121083145j:plain


エヴァンゲリオンは特殊な上映形態は一切なく50億円を超えたのだ。こちらもファンの複数回鑑賞は存在したが、それはゴジラも同じである。似た境遇なのに興収に大きな差が生まれているのだ。

エヴァなら公開すれば30億円は軽く超えてくるだろうが、ゴジラはどのような結果になるかが全く読めない。個人的観測ではIMAXや3Dがなければ30億すら危うい気がしている。エヴァならば名前だけで客を呼べるが、ゴジラはそれが出来ない。10年間何もしてこなかったブランクが原因だ。ブランド力は低下し、知名度も以前に比べると低い。これらの要素が重なり合い、東宝に危機感が生まれたのではなかろうか。

エヴァとシン・ゴジラは庵野秀明氏が関わっている、コラボするにはまたとない機会である。
「コラボすれば面白い」との考えもあっただろうが、それ以上に『ゴジラ』の知名度を再び高めることが目的のように思える。
『エヴァンゲリオン』の知名度に便乗することで、ゴジラを知らない層にゴジラを認知させようとしているのだろう。

現代においては『ゴジラ』を知らない人もいるだろう。2014年のハリウッド版である程度の再認知は果たせただろうが、それでもまだ不完全に思える。まだゴジラを知らない人も多いだろう。ゴジラと聞いてもピンとこない人もいるはずだ。

そのような層にゴジラを認知させるにはどうすればいいのか。
ここで庵野秀明氏が登場するわけだ。エヴァとゴジラの両方に関わる男だからこそ、コラボの打診もしやすかったのだろう。そして、コラボが実現した。

f:id:Sanyontama:20151203084539j:plain


エヴァと言う絶対的なブランドにゴジラが乗っかることによって、ゴジラを日本国民へ再認知させる試みに出たのだ。
普通に予告を出してテレビで露出していくという往来の宣伝だけでは30億は難しいと思える。2014年は10年ぶりのゴジラ映画だったが、シン・ゴジラは14年から2年しか経過していない。久々のゴジラという宣伝も使えないのだ。

だからこそ、東宝は焦っているのではなかろうか。正攻法に宣伝しただけでは映画界の期待に応えることが出来ない。失敗すれば東宝的にも痛手を被るだろうし、日本怪獣映画が鳴りを潜めることになる。日本映画が大作を避ける悪循環へと陥る可能性すら考えられる。

そのようなプレッシャーの中で思いついたのが"便乗"だ。
もはやゴジラはなりふり構っていられない状況になっている。
平成シリーズのように公開すれば大ヒットではなくなってしまった。2014年版も特殊上映形態で32億なのだから、東宝的には不満な数字だったのかもしれない。そのような状況にもかかわらず国産ゴジラを復活させるのは大きな決断と言える。

f:id:Sanyontama:20151211210841j:plain


東宝も相当に悩んだはずだ。出した結論が庵野秀明氏をとことん利用することだ。
エヴァブランドに乗っかることで、ゴジラを日本国民に再認知させる。そうしてシン・ゴジラに一人でも多くの観客を向かわせるのだ。

このコラボは"東宝の焦燥感"から生まれたものだと推測する。
このままシン・エヴァンゲリオンの予告をシン・ゴジラに付けるぐらいの勢いがあれば大ヒット間違いなしだろう。そうしなければならないほどに、ゴジラのブランド力は低下しているのだ。

本格的な宣伝攻勢が始まったが、それは節操のない形だった。
僕はこんな宣伝でも大歓迎だ。ゴジラを認知させないと映画自体もヒットしないだろう。ヒットしなければゴジラの歴史がまた止まってしまうからだ。この節操なさもゴジラファンは文句を言わずに見届ける方がいいのではなかろうか。

シン・ゴジラがどれほどヒットするのか、一ゴジラファンとして見届けたい。何としてもヒットしてほしいものだが果たして。