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『ガールズ&パンツァー劇場版』が内包する「マッドマックス/怒りのデスロード」並の熱量

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最高だ、最高の作品だ。@Sanyontamaです。

ガールズ&パンツァー(ガルパン)は女子高生が戦車で戦うという作品だ。戦車を題材にしているが戦争の悲劇性は皆無。戦車道というスポーツがあり、学校の部活動として存在しているという設定だ。そんなことを劇場版本編開始前に解説していた。

実のところテレビシリーズは鑑賞していない。
テレビシリーズはヒット作となっている。茨城の大洗ではガルパンで町おこしが行われるほどだ。聖地巡礼者も後を絶たないようだ。そんなヒット作だが、放送開始当初は興味がなくスルーしていた。再放送が始まってもその姿勢は変わらなかった。
劇場版が公開されても特に気にすることはなかったが、Twitterのフォロワーがガルパン劇場版で騒ぎはじめ、いつもは深夜アニメ映画を見に行かない人たちまで劇場に足を運び始めるという異様な事態が発生した。これはただ事ではないぞ、と感じた私は勢いに任せて鑑賞してきたわけだ。

ネタバレを含みます。

結論から述べておくと、ガルパン劇場版は「和製マッドマックス/怒りのデスロード」だった。
怒りのデスロードは最初から最後までイカれたアクションシーンで満たされた作品だ。V8や銀スプレーなどが強烈な印象を残し、作品そのものは宗教的なまでの人気を誇っている。
単純にアクションで押し通す作品ではなく、きちんとしたテーマを盛り込んだ作品として仕上がっている点も怒りのデスロードを宗教的な位置に押し上げる要因になっているだろう。

ガルパン劇場版も同じだ。
物語の半分以上が「アクション」で満たされている。冒頭から戦車同士のドンパチが開始され、それが長時間続くのには驚かされた。
ガルパンが怒りのデスロードに似ていると言われる所以はアクションの奇天烈さだ。
怒りのデスロードはこれまでのアクション映画を全てひっくり返しかねないほどの、奇想天外なアクションで観客を楽しませた。

この奇想天外さもガルパンは有しているのだ。
戦車道というのは武道だ。勝つためには戦術が必要になるのだが、その戦術は戦争とは大幅に異なる。実写では再現不可能なダイナミックな戦車アクションを見せてくれる。ジェットコースターのレールを戦車が走り、偵察用の高台としてしようしていたり、機動性を駆使して動きの遅い戦車を翻弄する。戦車の上に戦車が乗っかって移動してみたり、二台の戦車で一台の戦車を挟み撃ちにするなど、奇怪すぎる動きには驚愕するしかない。全く同じ描写をCGやセットで再現して実写に落とし込んだ場合、コメディにもならず失笑を買う見るに堪えないシーンになってしまうだろう。だがアニメだとそんなシーンも大真面目に描けてしまう。これがアニメの本質なのかとガルパンで気づかされてしまった。戦車という存在にこんな描き方があったのかと新たな世界を目撃させられて愕然とした。

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物語のテンポもよく、戦車道対決も戦術と言うロジックが存在しているから自然と手汗が滾ってしまう。アニメを見ているという感覚ではなく、本当にスポーツをみているかのような感覚に襲われてしまった。
勝敗が全く見えてこない対決。何を仕出かすかも読めない。物語の先行きを完全に読み銀幕から目が離せなくなってしまう。今度はどんな奇天烈を見せてくれるんだ!?と胸が高鳴ってしまうのだ。もっとだ、もっと戦車対決を見せてくれ!と興奮は留まることを知らない。
これは戦車道という武道であるのと同時に、戦車を使用したサーカスなのだと思える。そう思うに至るほど、常人には思いつかない奇天烈な動きを見せてくれるのだ。

演出も緩急の付け方がうまく過剰なりすぎない、煽りすぎない絶妙さを維持している。
セリフも音楽も一切なく、轟音や戦車の駆動音といった環境音だけで推し進めるシーンがある。
その演出は緊張感と臨場感を極限まで高めることに成功していた。本当に劇中の世界へ飛び込んだとすら思える名シーンだ。
その極限まで高まった緊迫感の針は遂に振り切れて、膝を打ちたくなるほどの完璧なタイミングで音楽が復活し、その高められた熱量は火山噴火のごとく放出される。この一連のシーンには参った。美少女アニメでこれほどの熱量を持っているとは思っておらず完全にやられたシーンだ。
このシーンはラストに存在しているが、このシーンだけはあと10回ぐらい見たい。それぐらい素晴らしかった。

ガルパンを侮っていた。これは完全にマッドマックス/怒りのデスロードだ。
アクションに次ぐアクション。洪水のようにアクションシーンが続く。中盤のシーン以外はほぼ全てがアクション。そのアクションも単純なものではなく、観客を飽きさせることのない「ロジック」を有しているからスクリーンから目をそらせない物に仕上がっている。
これを怒りのデスロードと言わずなんというのか。確実に和製マッドマックス/怒りのデスロードと呼んでも差支えのないほどの熱量を有している。
女子高生がこんな熱い戦いを見せてくれるとは思わなかった。

初体験のガルパンだったが異常なまでの熱量と清潔感には舌を巻いた。
女子高生キャラクターばかりが登場する、所謂美少女アニメとして作られているガルパンだが、彼女たちには性的な匂いが一切せず清潔感しか漂ってこない。その清潔感が戦車という存在にまとわりつく戦争の匂いをかき消しているように思えた。

物語自体も戦争の匂いを一切感じさせない。戦車を使って反戦を訴えるわけでも、好戦を煽るわけでもない。ましてや戦争の悲劇性を訴えることもしない。そこには戦車道という一つのスポーツしか存在していないのだ。
戦車を扱いながら戦争の匂いが皆無と言う作劇には驚かされる。戦車の本質を問いかけるかのようだ。これは生半可な腕では成しえない作劇だろう。

キャラクター達も個性があり、誰一人としてキャラ被りを起こしていないというのも凄まじい。大量に出てくるキャラクターをこうも個性豊かに描き分けることができるのか、と日本アニメの実力に驚かされた。
この作品は音響の良いところで鑑賞することをお勧めする。砲撃や爆発音の轟音に拘っている作品だからだ。だからこそ、音量が大きく音質がいい劇場での鑑賞をお勧めする。臨場感がさらに向上すること間違いなしだ。


文句の付けどころがない。初心者でもわかるようにテレビシリーズの解説も入っている点も良い。そもそも冒頭の解説がなくても楽しめてしまう作劇になっている点を褒めたい。深夜アニメ映画が陥りがちな一見さんお断りを見事に解消している。初心者でも楽しめる「一本の映画」として完成しているから、深夜アニメ映画の理想形はガルパン劇場版と言えるだろう。

この作品を見ると日本アニメは、いや日本のアクション映画の未来は明るいと確信できほどの熱量を有している。ただの美少女アニメと侮ってはいけない。欠点が見当たらない完璧さを見せつけてくれた大傑作だ。つまりガルパンはいいぞ、ということだ。