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漫画・刃牙シリーズの魅力を徹底的に語りまくる!

刃牙

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 こんにちわ。さよたま (@Sanyontama) です。


 「地上最強を目指して何が悪いッ!」
 とにかく強さを求める。圧倒的かつ謎めいた勢いで描かれる「刃牙」シリーズという格闘漫画がある。個人的には格闘漫画の金字塔だと考えているほどだ。単行本は通算100巻を超え、週刊少年チャンピオンの看板作品として現在も連載中。
 当ブログでは幾度となく刃牙シリーズの考察などを行ってきたが、今回は刃牙という作品が持つ魅力について書いていきたい。

刃牙シリーズとは


 この作品はどんな漫画よりもシンプルな内容である。主人公範馬刃牙が地上最強の父、範馬勇次郎を倒すために強さを求める。様々な敵と戦っていき、己を高めていく。ただそれだけの、非常にシンプルな作品だ。
 そこには巧妙に張られた伏線もや謎ときなんかは存在しない。正直に言うとストーリー性もあってないようなものだ。深く考えずに気軽に読み進めることが出来る。スナック菓子のような作品だ。

 しかし、そんな軽さを持ちつつも、作品自体は完成されているという奇妙な矛盾を抱えるのが刃牙というシリーズだ。

 第一部グラップラー刃牙から始まり、第二部バキ、第三部範馬刃牙で勇次郎との戦いを終え、現在は第四部の刃牙道が連載中である。

板垣恵介が放つ「動く漫画」


 刃牙の魅力はストーリーではない。ストーリーはそれほど練られたものではないからだ。やはり圧倒的躍動感を持った「絵」が魅力である。
 刃牙で付きまとうのは「絵」が気持ち悪いという評価だ。この意見には賛同できてしまう。なぜなら私も絵が受け付けなかった人間の一人だったからだ。しかし、勇気を出して一線を越えてからは、その魅力にどっぷりと嵌ってしまった。

 なんてことだ、漫画なのに動いているじゃないか・・・。

 第一部グラップラー刃牙ではお世辞にも絵がうまいとは言い難い状況である。しかし、連載を継続していくに従い、その画力は他の追随を許さない物へと変貌してゆく。
 
 板垣恵介の絵はこだわったアングルもない。他の漫画では映画的なアングルが多用され、実写やアニメになったときもそのまま流用できそうなカットも多い。しかし、刃牙はそんな「凝り」が存在しないのだ。

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 キャラクターの動きをシンプルに描く。格闘ゲームを思わせるような、ド直球な真横構図が多発される。
 キャラクターの動きを最も簡単に、そして詳細に観察できるのが真横からの構図だ。そこには捻りなんか存在しない。ただパンチを撃っているだけの描写を真横から描いているのだ。そのおかげで、何が起きているのかが良く理解できる。パンチが放たれて相手に命中するまでの流れが、見事なまでに分かりやすく観察できてしまうのだ。
 アングルにこだわりすぎて、何が起きているのか理解できない作品が存在する中で、板垣恵介という男は無駄を省きまくることで、シンプルながらも重厚な絵の完成にたどり着いた。

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 刃牙の絵は美術的な意味合いの「絵」として見た場合は明らかに異様なのだ。手足は異様に長いからデッサンは狂っている。しかしその手足の長さこそが「速さ」を演出させていると板垣恵介は語っている。実際に読むと、その異様なまでのスピード感が分かる。静止画なのにキャラクターが動いているかのような感覚に襲われる。
 このスピード感でコマとコマの間に発生する動きを自然と補完できてしまう。動きが分かりやすいから、コマとコマの間で何が起きているのかを想像することも容易いわけだ。

 つまり漫画なのにアニメを見ているような不可思議さを作り出しているわけだ。
 
 板垣恵介は美術的な意味での「絵」を完全に捨て去り、独自の路線を突き進むことにより圧倒的な躍動感を手に入れた。この躍動感は漫画屈指なんじゃないのかと思う。
 他には真似できない「動く漫画」こそが刃牙なのだ。

謎の説得力


 刃牙のストーリーはシンプルだから、ここはあまり語れることも少ない。絵以外に特筆すべきなのはやはり「説得力」だろう。
 刃牙という作品は謎の説得力を有している。キン肉マンや男塾を思い出してほしい。作品自体に疾走感があるので、無茶苦茶な理論が展開されても、なぜかすんなりと頭に入ってくる。そんな経験はないだろうか。

 刃牙にも謎理論が存在している。
 首に視神経が存在していて、それを切ってしまえば相手は失明する。
 最強の打撃は「当てない」打撃。
 高速で眼球から目つぶしに突っ込み、相手の指を折る。
 片足が沈む前にもう片方の足を出せば水に沈むことなく水面を歩ける。
 ポケットに手を突っ込み刀における居合のように、高速で抜き手を行い相手を攻撃するハンドポケットという技の存在。
 ゴキブリの肉体は液状などなど・・・。

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 つい最近も理解が追いつかない描写が出ている。
 第4部刃牙道の冒頭。宮本武蔵のクローンを作り、クローンには魂がないから武蔵としては完成していな いと謎の理論が展開され、イタコに魂を降霊させて武蔵を完成させる。格闘漫画とは何かという哲学的な描写が印象的だった。。未だにこんなことをやらかすの だから、やっぱり刃牙は頭がおかしい。
 意味不明な理論だけど、読んでいる最中はなぜか圧倒され納得してしまう。なるほど~! 魂がないのかッ! と膝を打ってしまうわけだ。

 あたかも真実のように思える理論を作り出すことに長けているせいもあるが、やはり作品が持つ疾走感が謎理論を納得させてしまう主たる要因だろう。勢い任せだからこそ、読者は圧倒される。だから読書中は納得させられてしまう。様々な要因が交錯するおかげで、謎の説得力を生み出してしまうわけである。
 これは完全にキン肉マンや男塾と同じ理論だ。勢いで押し通すからこそ「な、なるほど~!」と理解してしまう。でも読後は「んなわけねーだろ!」と冷静に突っ込んでしまうわけだ。
 その説得力こそが、刃牙の魅力だ。説得力の強さのおかげで、私は今でもハンドポケットとマッハ突きを練習するのであった・・・。

とにかく笑える


 格闘漫画でこれを言ってしまうと元もこうもないのだけれど、とにかく笑えてしまう。謎の説得力もそうだけど、時折挿入されるギャグにしか思えない描写の数々が笑いを誘発してくるのだ。
 作品自体は真剣に描かれているせいで、余計に笑えてしまうというのもある。
 作品が内包する異様な熱量に読者が追いつけないのだ。その温度差が描写をギャグへと押し上げる要因である。

 数年前に話題となったゴキブリ師匠が鮮烈にデビューした翌日に、範馬勇次郎が雷に撃たれるという話が展開された時は、予想外の展開に息ができないほど爆笑した記憶もある。

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 こんな狂った流れをぶっこんでくるから刃牙は侮れない。毎週読み続けていても、予想不可能な描写を挿入してくるせいで電車の中で爆笑しかけてしまう。というか、何度か人目をはばからずに声を出して笑ってしまうこともあった。何もかもが予想不可能。予想を裏切り、期待を裏切る姿勢こそが刃牙だ。
 
 強者と強調されたキャラクターがカマセにされる意外性や、謎理論の展開。意味不明な描写の数々。これらのおかげでギャグ漫画と形容されることも少なくはない。
 想像で体重100キロのカマキリと戦ったり、原始人と戦ったり、強くなるためにセックスをしたりと、その強さへの探求心は狂気を帯びている。そのせいで、ギャグにしか思えない描写が完成してしまうのだ。この探求心こそが板垣恵介の破天荒な作風を完成させている。
 
 原始人ピクルは顎の力がすごい。だから顎の力に定評のあるジャックハンマがピクルと噛み合い勝負をする。その勝負が口と口をくっ付ける超ディープなキスなのだから、頭がおかしいとしか思えない。
 ゴキブリを師匠とあがめ、彼(?)から高速で相手に突っ込むゴキブリタックルを学び、彼に感謝の土下座を行う。
 何が何だかさっぱり理解できないシーンが続出するおかげで、格闘漫画なのに捧腹絶倒してしまうわけだ。
 
 これはギャグ漫画と形容されるが、私はそう呼びたくはない。
 なぜなら、ギャグとしても品質が高く、そして格闘描写は漫画の完成形として君臨している。
 だから敬意をもってこう呼びたい。刃牙のジャンルは「刃牙」であると。

終わりに


 こんな破天荒で狂った作品だが現在も連載は継続中。恐らく終わりはない。ストーリーが矛盾していようとも、つまらなくとも、それすらも刃牙の魅力の一つになっている。今でも予想外の展開をぶっ込んでくるから、板垣恵介という男を侮ることが出来ない。
 作品は今後どのような展開を迎えるのか。

 漫画の表現としては完成形である刃牙を一度読んでみると言い。その破天荒さにすぐ虜になるはずだ。
 単行本の巻数は多いけれど、サクサク読み進めることができるのもお勧めできる点である。是非とも一読してほしい。