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『ジュラシックパーク』は不老不死映画だ!

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こんにちは。@Sanyontama (さよたま)です。

ジュラシックワールドの日本公開が迫る中、過去作の復習を兼ねてUK盤ブルーレイを購入。
ジュラシックパークは数年ぶりの鑑賞。以前は地上波で幾度となく放送されていたが、それもめっきり減少してしまった。8月7日にフジテレビ「金曜プレミアム」枠にてHDリマスター版がノーカット放送されるとのこと。シネマトゥデイ:地上波初!『ジュラシック・パーク』HDリマスター版放送!

久々に鑑賞すると「1993年公開の作品なのか?」と腰を抜かすほどに、色あせていなかった。老いを一切感じさせない。2013年に3D版が海外で公開されるなど、人間でいえば美容整形じみたことも行っているが、そもそもオリジナルが素晴らしすぎて時代を感じさせない仕上がりになっているのだ。

・そこには夢が存在している

この作品が偉大な点は夢の世界をしっかりと描けている点だ。
22年も前の作品だから、さすがにCGは見るに堪えないだろうと思い込んでいたがそれは記憶違いであった。作興の高品質な、もはや人間が演じる必要性があるのだろうかと思えるほどのVFXではないが、それでも十分なほど鑑賞に堪えうる仕上がりになっている。

恐竜が出てくるまでが以外にも長い。本編開始から20分ほど経過して、ようやくのご登場だ。
主人公のグラント博士とサトラー博士がジュラシックパークの査察に訪れる。広大な草原で、二人はあるものを目撃する。驚愕に満ちた二人の顔をしつこいほどに映し出す。恐竜の姿はまだ見せない。これだけ待たせてまだもったいぶるのか!というストレスがたまるのだが、それは恐竜の姿を見ると主役二人と同じ反応、つまりは驚愕と快感に変化するのだ


有史以来、化石と想像図でしか拝めなかった恐竜が目の前にいる!
映画だとは理解していても、これは現実なのかもしれないと錯覚するほどにリアルなブラキオサウルスが現れるのだ。このブラキオサウルスはすべてCGで描かれているが、今見てもその感動は薄れることがない。
久々に鑑賞して「お、おお・・・」と驚嘆の言葉を漏らしてしまったほどだ。同時に驚異的な情熱が伝わってきて言葉を失ってしまう。
見ろ!恐竜がいるぞ!と叫びたくなるほどに、観客は夢の世界に来たとここで確信するのだ。

 

・CGとアニマトロニクスにより攪乱される視覚

しかし、CGで恐竜が描かれるのは全体の7分ほどである。しかしながら本作の恐竜がフルCGと思われがちだ。それ現実との差異が一目では分からないほどにCGが馴染んでいるという証明でもあるのだ。
スピルバーグは金に物を言わせて劇中同様に本物の恐竜を作ってしまったのでは、と当時は話題になったという。このCGがどれほど偉大な物であるかが良くわかる。
重量感を伝えるためにブラキオサウルスが一歩進むごとに画面がゆれるという演出もうまい。そこに恐竜が存在するという現実味を更に増すことに繋がっているからだ。きめ細かな演出で夢の世界だと観客に強く訴えかけてくる。

しかしCG以外ではアニマトロニクスなどが大活躍している。
着ぐるみも使用されており、恐竜の実在感、重厚感を増すことに成功しているのだ。人間と間近で絡み合う場面は着ぐるみがしようされており、その恐怖感を訴えかけてくる。


実物大のT-Rexを製作していたり、ある意味で恐竜を作ってしまっているのが本作の素晴らしくぶっ飛んだ点だ。 
獰猛に雄たけびをあげる場面などで、この実物大が使用されている。雨に打たれながら吠える様は本物と見まがうほどであり、CGとはまた違うリアルさを醸し出しているのだ。

前半はディスカバリーチャンネルナショジオを思わせる作品作りだ。淡々とパークの内情を紹介していく様はドキュメントのようである。
後半はサスペンスでありスリラーであり、冒険活劇であり、様々な要素を凝縮した一大アドベンチャーへと変貌する
この作品のスターであるティラノサウルス(T-レックス)が登場し、全てをぶっ壊していくのだ。
T-レックス登場までも焦らすのである。最初の恐竜が登場するまでも焦らしていた。この作品は明るい作風ではあるがストレスや不安が肝になっているのだ

ジョーズという映画がある。ジュラシックパークと同じくスピルバーグ監督作だ。
この作品では殺人ザメをテーマに、人間との攻防を描いている。ジョーズも焦らすのだ。人間が海中に引きずりこまれる、海面が真っ赤に染まるなどサメによる直接的な攻撃は冒頭より描かれているのだが、肝心のサメは姿を現さない。
焦らしに焦らし、溜めに溜めてからその獰猛で凶暴な姿を現し劇中の人物同様、観客を恐怖と絶望へと叩き込むのだ。
この焦らし効果が観客にストレスを与え不安にさせる。サメが退治された瞬間に、それらの精神的不安感は快感へと変わるということをジョーズで理解したのだろう。のちの作品でも焦らしの効果が盛り込まれており、ジュラシックパークでもそれが存分に発揮されている。


恐竜の王者、T-レックスの登場までは時間がかかっている。
まず車内のコップが映し出される。水の入ったコップだ。何もしていないのに波紋が出てくることに気付く。
その波紋により登場人物も観客も異変に気付くのだ。今までにない何かが起こると予期させる名演出だ。
波紋を生み出した正体。まずフェンスにかかった腕だけが映し出される。まだ全身は見せない。
そうして王者の顔が映し出される。ヤギを丸のみしながらの登場だ。この動きだけでこいつがどれだけ凶暴でどれほどの野生なのかを十分に理解できる
T-レックスの登場で物語は緊迫度を増し、武器も何もない状況下でどう対処していくのかが見どこになるのだ。ある種の怪獣映画的興奮をもたらせてくれる、屈指の名シーンである。


T-レックスが物語を破壊してひっくり返す。
以降はジュラシックパークからの脱出劇を描くことになり、それも緊迫感があり興奮と不安に叩き込んでゆく。
どこに凶暴な肉食恐竜が潜んでいるか分からないという恐怖さ。プレデターなどに通じるモンスターパニックとして本作を見ることができるのだ。

ファミリー映画である故に教育的な面も盛り込まれている。
ジュラシックパークのの母体であるインジェン社のライバル企業に恐竜の胚を提供する産業スパイを行う人物がいるのだが、受けて恐竜に襲われてしまう悲劇的な運命をたどった。
あくどい事を企むとしっぺ返しを受けるというスピルバーグなりのメッセージなのだろう。

この作品が傑作であり、老いを感じさせないのは作り手の真摯さが息づいているからだろう。
CGとアニマトロニクスとの使い分けも絶妙で視覚的な古さを感じさせないことに成功している。

どこまでが本物で、どこまでがCGなんかまったくわからない。視覚が完全に攪乱されてしまうのだ。
サファリパークと恐竜時代を見事に融合させていることも本作を普遍的な作品に押し上げているポイントだろう。
サファリパークはどの時代でも、どの国でもその形は大きく変化しないのだ。どこへ行っても車で園内を巡るシステムである。動物たちは開放的に飼育されている。本作はその動物を恐竜に置き換えただけなのだ。形を変えないサファリパークだからこそ、視覚的にいつまでも劣化を感じさせないことに繋がっているし、野生的飼育ゆえにその獰猛さも描くことができる、一石二鳥なビジュアルになっているのだ。

これほどまでに古くない作品とは驚いた。
日本では3D版が劇場公開されなかったことが残念で仕方がない。
しかし、8月5日からはジュラシックワールドが公開される。正当な続編とも評されるJWに俄然期待が上がってしまうのだ。
あのパークが遂にオープンしたというだけで、胸の高鳴りが収まらない。
それほど、ジュラシックパークは全身を刺激してくれたのだ。


なお実際に蚊の琥珀からDNAを取り出すことは不可能とのこと。6500万年もDNAは持たないようだ。その十分の一程度、680万年ほどでDNA配列は破壊されるとのこと。科学の進歩というのは時に残酷である。